6号ボートの責任者
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/03/04 06:42 UTC 版)
「ロバート・ヒッチェンス」の記事における「6号ボートの責任者」の解説
その後、ヒッチェンスは6号ボートの責任者としてタイタニック号を脱出したが、突然大きな権限を与えられたことでのぼせ上り、ボート内で暴君的に振舞った。一等客アーサー・ゴドフリー・ピューチェン(英語版)少佐(化学薬品製造会社社長)にボートの指揮権を奪われることを恐れ、指揮を執っているのは自分であることを示そうと彼にあれこれ指示を与え続けた。このボートは漕ぎ手はピューチェンと見張り番のフレデリック・フリートしかいなかったので、ピューチェンは、舵取りは女性に任せてヒッチェンスに漕ぐのを手伝うよう要求したが、ヒッチェンスは耳を貸さず「責任者は俺だ。黙って漕げ」とピューチェンに言い返した。フリートに対しても一度「右舷の奴、オールを入れる角度が悪いぞ」と怒鳴り散らしている。さらにエドワード・スミス船長がメガホンで6号ボートに「舷門につけろ」と指示してもヒッチェンスは「船に戻るなんてご免だね。他人の命より自分の命だ」と述べて船長命令を無視してボートを戻さなかった。 タイタニック沈没後にはマーガレット・ブラウン(モリー・ブラウン)を筆頭に数人の女性客が海に落ちた人を助けに戻りましょうと提案したが、ヒッチェンスは大勢の人間がボートにしがみついてきてボートが転覆することを恐れて拒絶した。ピューチェンも助けに戻るべきだと主張したが、ヒッチェンスは「戻っても無駄だ。死体がたくさんあるだけだ」と怒鳴りつけてピューチェンを黙らせ、男たちに漕ぐのをやめろと指示してボートを波に任せた。我慢できなくなったモリーは、ヒッチェンスが船尾に座って帆を身体にまいて寒さを凌いでいる隙に彼を押しのけて舵の柄を掴んだ。モリーの指示で女性客たちがオールを漕ぎ始めた。ヒッチェンスが近寄ろうとするとモリーは「一歩でも近づいたら海に投げ込んでやる」と凄んだ。ヒッチェンスは彼女を罵っていたが、16号ボートから移ってきた汽缶夫に「それがご婦人に対する口の利き方か」とたしなめられた。ヒッチェンスは「相手が誰かくらいわかっている。このボートの責任者は俺だ」と怒鳴り返したものの、うんざりしたのか、旗色が悪いと見たのか、ふてくされて黙ってしまった。結局この口論の間に助けを求める声は聞こえなくなり、引き返す意味がなくなったのでボートは夜の闇へ漕ぎ始めた。
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