魔術・宗教
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/17 07:41 UTC 版)
魔術や宗教は、古代エジプトにおいて日常生活と切り離せない要素であった。神々や悪霊がさまざまな症状の原因とされたため、神への訴えから処置を開始するなど、治療には神がかり的な要素が含まれた。現在では、神官と医者はまったく別の職業として区別されるが、当時はそのような明確な区別はなかった。癒し手たちの多くはセクメトやセルケトの神官であり、まじないや魔術を処置法の一部として用いた。 魔術や宗教の信仰が流布していたことが、強いプラセボ効果をもたらした可能性もある。言い換えれば、治療が成功したように見えたのも、治療行為自体の有効性のためではないとも考えられる。魔術への傾倒がもたらした影響は、治療薬やその材料の選定に現れており、材料の元となる植物・動物が患者の症状に、なんらかの意味で対応していることが理由であると思われるような材料の選定がしばし行われた。これはsimila similibus(類似に類似を)の原則として知られ、現代のホメオパシー処置に至るまで、医学誌を通して見受けられる概念である。これに従って、ダチョウの卵は骨折の処置に使われ、ハリネズミを描いた護符は脱毛症に対して使われることもあった。 護符は一般的にかなりの人気をもっており、さまざまな魔術的目的を持って身につけられていた。健康に関するお守りはホメオパシーの護符、魔除けの護符、神の護符に分けられる。ホメオパシーのお守りは、動物や動物の一部が描かれており、着用者はそこから力や速さといった加護を得ようとした。魔除けの護符は害をもたらす神や悪霊から着用者を守るものであった。有名なホルスの目(ウジャト)も、しばしば魔除けの護符に用いられた。神の護符は、エジプトの神を描いたものである。イシスの帯を描いた護符もあり、これは流産の出血を止めるのが目的であった。
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