高次フラーレンとは? わかりやすく解説

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高次フラーレン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/06/16 14:11 UTC 版)

高次フラーレン(Higher fullerenes)は、70個以上の炭素で構成されるフラーレン分子である。六角形と五角形の面が融合して籠の形を作っている。

合成

1990年、W・クレッチマーとD・R・ハフマンは、kgもの量のフラーレンを簡単に効率良く合成できる方法を開発し、フラーレンの研究が一気に進んだ。この技術では、ヘリウム中で高純度の2つのグラファイト電極の間をアーク放電させることで、炭素のすすを生成する。または、グラファイトのレーザーアブレーションか芳香族炭化水素熱分解によってすすを生成する。フラーレンは、すすの中から多段階の過程によって抽出される。まずは、すすを適切な有機溶媒に溶かす。この段階で、最大70%のC60と15%のC70、その他のフラーレンからなる溶液ができる。これをクロマトグラフィーを用いて分離する[1]。この方法でmg量の高次フラーレンを得ることができ、また、C76、C78、C84は試薬として販売されている。

性質

分子

化学式 CAS登録番号[2] Nis[3] 分子対称性[4][5]
C60 99685-96-8 1 Ih
C70 115383-22-7 1 D5h
C72 1 D6h
C74 1 D3h
C76 135113-15-4 2 D2*
C78 136316-32-0 5 D2v
C80 136316-32-0 7
C82 136316-32-0 9 C2, C2v, C3v
C84 135113-16-5 24 D2*, D2d
C86 135113-16-5 19
C88 135113-16-5 35
C90 135113-16-5 46
C3996 175833-78-0

表中で、NISは、フラーレン中で五角形の面同士は隣合わないというルールの中でありうる同位体の数を表している。対称性は、実験的に最も量の多いものを示した。*の記号は、2つ以上のキラル型で対称性を持つことを意味する。

固体

高次フラーレンの固相[6]
化学式 対称性 空間群 No ピアソン記号 a (nm) b (nm) c (nm) Z ρ (g/cm3)
C76 単斜晶 P21 4 mP2 1.102 1.108 1.768 2 1.48
C76 立方晶 Fm3m 225 cF4 1.5475 1.5475 1.5475 4 1.64
C82 単斜晶 P21 4 mP2 1.141 1.1355 1.8355 2

トルエン溶液からC76またはC84の結晶を生成すると、単斜対称となる。しかし、C76の溶媒を蒸発させると、面心立方体に変わる。単斜晶と面心立方体の相は、C60とC70でも知られている。

出典

  1. ^ Katz, 369–370
  2. ^ W. L. F. Armarego; Christina Li Lin Chai (11 May 2009). Purification of laboratory chemicals. Butterworth-Heinemann. pp. 214–. ISBN 978-1-85617-567-8. http://books.google.com/books?id=PTXyS7Yj6zUC&pg=PA214 2011年12月26日閲覧。. 
  3. ^ Manolopoulos, David E.; Fowler, Patrick W. (1991). “Structural proposals for endohedral metal-fullerene complexes”. Chemical Physics Letters 187: 1. doi:10.1016/0009-2614(91)90475-O. 
  4. ^ Diederich, Francois; Whetten, Robert L. (1992). “Beyond C60: The higher fullerenes”. Accounts of Chemical Research 25 (3): 119. doi:10.1021/ar00015a004. 
  5. ^ K Veera Reddy (1 January 1998). Symmetry And Spectroscopy Of Molecules. New Age International. pp. 126–. ISBN 978-81-224-1142-3. http://books.google.com/books?id=oZeFG6QDNekC&pg=PA126 2011年12月26日閲覧。. 
  6. ^ Kawada, H.; Fujii, Y.; Nakao, H.; Murakami, Y.; Watanuki, T.; Suematsu, H.; Kikuchi, K.; Achiba, Y. et al. (1995). “Structural aspects of C82 and C76 crystals studied by x-ray diffraction”. Physical Review B 51 (14): 8723. doi:10.1103/PhysRevB.51.8723. 

関連文献

外部リンク

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高次フラーレン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 03:13 UTC 版)

フラーレン」の記事における「高次フラーレン」の解説

詳細は「高次フラーレン」を参照 炭素原子の数が60個を超えているクラスター存在する。これを高次フラーレンと呼ぶ。アーク放電法などによるC60フラーレン合成の際、これら高次フラーレンが少量ながら生成される炭素数が70, 74, 76, 78……のものなどが単離されている。これらも全て5員環・6員環から成っており、7員環以上の環を持つフラーレン実際に発見されていない炭素の数がいくつになっても5員環の数は12決まっており、6員環の数だけが増えていく(オイラーの多面体定理より)。 また、フラーレン骨格においては5員環は隣り合わせならないという規則がある(孤立5員環則、IPR)。C60 フラーレンIPR満たす最小フラーレンであり、その次が C70 となる。C62 や C68 などが発見されないのは、これらがIPR満たし得ない炭素数だからと考えられる(ただし後述のように、内包フラーレンでは例外存在する)。

※この「高次フラーレン」の解説は、「フラーレン」の解説の一部です。
「高次フラーレン」を含む「フラーレン」の記事については、「フラーレン」の概要を参照ください。

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