鞭などいらぬ水平に水平に砂つむ馬
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出 典 |
風の背中 |
前 書 |
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評 言 |
鈴木勁草は秋田県出身の根っからの俳人である。 終戦間際の旧制中学に入学したときは軍事教練を受け、敗戦後は全く価値観の変わった新制高校の教育を注ぎこまれた上、長引く戦後不況の真っただ中へ放り出されてしまう。 その後上京することになるのだが、昭和20年代の後半は地元秋田での厳しい労働環境を経験している。 鉄かつぎし重みが昼寝さめし後も 雁啼くや手の温みあるシャベルの柄 汽車通す除雪人夫ら棒立ちに 崖にどんづまる夜業の灯の厚み 夕ざくら土工吃って酔うはよし 勁草俳句に通底する弱者への温かい眼差しは、この時期に体験した手足の感覚が、生涯を通して身に沁みついているのであろう。 当時の物資の運搬手段は、その頃出始めたオート三輪と呼ばれた自動車のほか、人力で引く車か馬力即ち馬に牽かせる橇や荷車が主だったようだ。木と鉄で出来ている車輪は摩擦が大きく、動き出す瞬間の力は並みではない。 14,5歳から俳句を作り始め、「べんがら」の村山古郷に師事した。古今の俳書を読み漁り、高校の文芸部ではその博識は一頭地を抜く存在であったという。 現場に身を置き、つねに低い目線から物を見る俳句作りの基盤をすでにこの時期から強固にしている。 作品から作者の伝えようとするイメージがストレートに伝わってくる俳句が少なくなった現在、折にふれて鈴木勁草を読み返すと、現代俳句のもやもやがすっとする。(つづく) |
評 者 |
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備 考 |
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