電弱バリオン数生成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 15:13 UTC 版)
「バリオン数生成」の記事における「電弱バリオン数生成」の解説
標準模型はバリオン数生成を組み込むことができるが、このようにして作られた正味のバリオン(およびレプトン)の量は、現在のバリオン非対称性を説明するには十分ではない可能性がある。この問題はまだはっきりとは決定されていない。 標準模型内のバリオン数生成では、電弱対称性の破れが一次相転移であることを必要とする。そうでない場合、スファレロン(英語版)が相転移までに生じたバリオン非対称性を拭い取るが、バリオン非保存相互作用の量は無視できる量である。 相転移のドメインウォールはP対称性を自発的に破り、CP対称性を破る相互作用がその両側にC非対称性を作ることができるようにする。クォークはドメインウォールの破れた相側に蓄積する傾向があり、反クォークは破れていない相側に蓄積する傾向がある。これは次のように生じる。 CP対称性が破れた電弱相互作用により、クォークを含むいくつかの振幅は対応する反クォークを含む振幅と等しくないが、逆の相を持つ(CKM行列およびK中間子参照)。時間反転は振幅を複素共役にとり、CPT対称性が保存される。 クォークも反クォークも正のエネルギーを持っており、それゆえ時空を移動すると同じ相になるが、それらの振幅のいくつかは逆の相を持つ。この相は質量にも依存し、質量は同一であるがフレーバーおよびドメインウォールに沿って変化するヒッグスVEVに依存する。したがってクォークの振幅の特定の合計は反クォークのものと比較して異なる絶対値を持つ。全体としてクォークと反クォークは、ドメインウォールを介して異なる反射と透過の確率を持っていることがあり、反クォークと比較して破れていない相から来るより多くのクォークが伝達されることが分かる。 したがって、ドメインウォールを通る正味のバリオン束がある。破れていない相に豊富にあるスファレロン遷移により、破れていない相の正味の反バリオン成分が拭い取られる。ただし、スファレロンは破れた相ではそこにある過剰なバリオンを拭い取ることがないよう十分まれな存在である。全体として正味のバリオン数生成がある。 このシナリオでは、非摂動的な電弱相互作用(すなわちスファレロン)がバリオン数の破れの原因となり、摂動的な電弱ラグランジアンがCP対称性の破れの原因となり、ドメインウォールが熱平衡の欠如の原因となる。これはCP対称性の破れとともにそれぞれの側面にC対称性の破れを生み出す。
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