電子のスピンとの関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/19 01:09 UTC 版)
常磁性を持つ分子や原子は、外部磁場がなくとも永久磁石となる双極子モーメントを持っている。このモーメントはその分子・原子における電子軌道(磁気モーメントを参照)での不対電子のスピンから生まれている。外部磁場がない場合、双極子どうしは互いに作用せず、熱ゆらぎのためそれぞれバラバラな方向を向いている。ゆえにこのとき、この物質は磁性を持たない。しかし外部磁場が加えられると、双極子も加えられた磁場と同じ方向を向き、外部磁場と同じ方向に磁化されることになる。かつては、この電子の整列は外部磁場によって磁気モーメントにトルクが生まれ、外部磁場に平行に並ぼうとするためにおこると考えられていた。しかし、実際はスピンや角運動量の量子力学的性質によるものだった。 近接する双極子が相互に影響を与えるだけのエネルギーを持っていて、同時に電子スピンが外部磁場と同じあるいは逆向きに並び、磁場を作ることができる場合、それは強磁性(永久磁石)あるいは反強磁性をもつことになる。しかしその物質が強磁性や反強磁性を示す場合でも、ある温度以上になると、スピンは互いにでたらめの方向を向くようになって常磁性を示すようになる。この温度を強磁性ではキュリー温度、反強磁性ではネール温度という。これは、高温では物質のもつ熱運動のエネルギーがスピンの相互作用のエネルギーを上回るためである。 一般的に、常磁性の影響は非常に小さい。多くの常磁性を持つ物質(常磁石)は磁化率が10-3から10-5のオーダーであるが、磁性流体のような合成常磁石の中には10-1のオーダーを持つものもある。
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