電子との再結合反応
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/19 01:03 UTC 版)
「プロトン化水素分子」の記事における「電子との再結合反応」の解説
1997年に低密度雲で H3+ が観測されると、この再結合反応が低密度分子雲での H3+ の存在量を決定づけることから、天文観測者からもこの反応の正しい反応速度が求められるようになった。しかしながら H3+ と電子との再結合反応の反応速度について1970年代から測定されていた実験値は、測定方法の違いによって 10−7 から 10−11 cm3 s−1 まで4桁の違いがあったため、研究者の間で論争の的になった。2000年代後半まで議論は混迷し、「謎」「パズル」「物語」などの語が論文や会合で用いられた。 基準となる値としてコンピューターでの非経験的分子軌道法(ab initio 計算)によるものがあり、2003年にコクーリン (V. Kokoouline) とグリーン (C. H. Greene) によってヤーン・テラー効果による補正を取り入れた計算結果が発表されると、それによる値 (7.2 ± 1.1) × 10−8 cm3 s−1 (300 K) がもっとも正確な理論値として参照されるようになった。 1990年代以降に発展したビーム蓄積リング法による実験値はばらつきも少なく理論値とよく一致するとされ、岡は2006年の時点でもっとも信頼できる実験値として、マッコールらによる2004年の 2.6 × 10−7 cm3 s−1 (23 K) を挙げている。アフターグロー法による実験値と理論値との違いは、誤差ではなく再結合反応の機構によるもの、すなわち H3+ 分子の振動状態や He の共存による影響によるものとして補正が考案され、解釈されている。2010年には、論争にはほぼ決着がつき、今後は細部の正確化が望まれる、とする総説が発表された。
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