電子の動力学的回折理論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/06/06 06:36 UTC 版)
「動力学的回折理論」の記事における「電子の動力学的回折理論」の解説
電子の動力学的回折理論には2つの方法がある。 1つは1928年のベーテによる方法である。これはX線におけるエバルトとラウエの理論に対応するものである。固体内の電子はブロッホ波で記述し、真空中に入射波と散乱波(回折波)を考え、表面で2つの波をなめらかに繋げる。このとき波動方程式を解くことが行列式を解くことに帰着することから、マトリックス法とも呼ばれる。比較的厚い試料からの電子回折強度を用いる定量解析には、マトリックス法が用いられる。また結晶内で起こっている物理現象を理解するのに優れている。 もう1つは、多重散乱の方法である。これはX線におけるダーウィンの理論に対応するものである。原子層ごとの散乱を考え、その散乱波がほかの原子層で散乱を繰り返すと考える。Howie-Helanの理論は、散乱による電子波の振幅変化を微分方程式の形にしたHowie-Whelan方程式を解く。これは主に格子欠陥の解析に使われる。Cowley-Moodieの理論はマルチスライス法(英語版)とも呼ばれ、試料を極めて薄いスライスに分けて、各スライスでの電子波の散乱と伝搬を計算する。多くの波を容易に取り入れることができる。薄い試料を対象とする高分解能TEM像のシミュレーションに用いられる。
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