開始決定・差押え
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/04 22:14 UTC 版)
申立てが適法にされていると認められた場合は、執行裁判所は、強制競売を開始する旨及び目的不動産を差し押さえる旨を宣言する開始決定を行う(法45条1項)。この裁判に不服があるものは民事訴訟法の不服申立ができる(民事執行法1・20条による)。この手続きを先に進めるためには、本案の債務名義とは別に当該裁判の確定裁判の執行文つき債務名義の提出が必要である(民訴法122条・民執法22条1号・同25条)。 開始決定が執行力のある債務名義である場合は(民訴法114・122条・民執法1・20・22-1・25条号)、裁判所書記官は、登記所(管轄法務局)に対し、目的不動産の登記簿に差押えの登記をするよう嘱託をする(48条1項)。また債務者に開始決定正本を送達する(45条2項)。 現況調査・評価 執行裁判所は、執行官に現況調査を命じ、現況調査報告書を提出させるとともに(57条、規則29条)、評価人に目的不動産の評価を命じ、評価書を提出させる(58条、規則30条)。 現況調査報告書には、土地の現況地目、建物の種類・構造など、不動産の現在の状況のほか、不動産を占有している者やその者が占有する権原を有しているかどうかなどが記載され、不動産の写真などが添付される。評価書には、競売物件の周辺の環境や評価額が記載され、不動産の図面などが添付される。 売却基準価額決定・物件明細書 現況調査報告書と評価書が提出されると、執行裁判所は、評価人の評価に基づいて売却基準価額を定める(法60条)。売却基準価額とは、不動産の売却の基準となるべき価額である。それから2割を引いた額が買受可能価額となり、買受申出(入札)は、買受可能価額以上でなければすることができない(60条3項)。 また、裁判所書記官は、目的不動産の権利関係について記載した物件明細書を作成する(62条)。物件明細書には、そのまま引き継がなければならない賃借権などの権利があるかどうか、土地又は建物だけを買い受けた時に建物のために底地を使用する権利が成立するかどうかなどが記載される。 裁判所書記官は、物件明細書・現況調査報告書・評価書の写しを執行裁判所に備え置いて一般に公開する(62条2項、規則31条3項)。これらの3つの書類を「3点セット」と呼ぶこともある。3点セットはインターネット上でも公開することができ(62条2項、規則31条1項、3項)、BITシステムという。 買受けを希望する者は、広告などで興味のある物件を見つけたら、執行裁判所の閲覧室やBITで3点セットの閲覧をする。3点セットには、前記のとおり、競売物件の買受けのための重要な内容が記載されているから、その内容をよく理解して吟味する必要がある。 売却実施 売却の準備が終わると、裁判所書記官は、売却の日時、場所のほか、売却の方法を定め、不動産の表示、売却基準価額、売却の日時・場所を公告する(64条)。 売却の方法には、入札、競り売りなどがあるが(64条2項、規則34条)、第1回目の売却方法としては、定められた期間内に入札をする期間入札(規則46条~49条)を行うのが通常である(以下、期間入札について説明する)。 物件の買受けを希望する者は、まず、公告書に記載されている保証金(原則として売却基準価額の2割)を納める必要がある(66条、規則49条、39条)。その上で、所定の入札期間内に、入札書を入れた封筒と保証金の振込証明書等を執行官に提出する(規則47条、48条)。入札は、買受可能価額以上の金額でしなければならない(60条3項)。 執行官は、開札期日において開札を行い、最高価買受申出人を定める(規則49条、41条3項)。
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