造血幹細胞移植の意義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/29 13:51 UTC 版)
「造血幹細胞移植」の記事における「造血幹細胞移植の意義」の解説
放射線治療や抗がん剤の投与は投与量や線量を増加させていくと最大耐用量(MTD)を超えた時点でなんらかの毒性のためそれ以上の増量が不可能となる。多くの抗がん剤において、規定因子は骨髄抑制である。造血幹細胞移植とは抗腫瘍効果を高めるため骨髄のMTDを超えた大量の抗がん剤、全身放射線照射を用いた強力な治療を(移植前処置)を行って、患者骨髄とともに悪性腫瘍の壊滅を行い、その後造血幹細胞を輸注することで、造血能を補うという治療法である。 固形臓器移植と造血幹細胞移植の大きな違いの一つとしては臓器移植ではドナーの正常な臓器を移植することで臓器機能の回復をすることを目標としているのに対して、造血幹細胞移植の一般的な目標は骨髄のMTDを上回る大量の抗がん剤や放射線照射による治療を可能とすることと、ドナー免疫に由来するGVL(Graft versus Leukemia:移植片による抗白血病効果)やGVT(Graft versus Tumor:移植片による抗腫瘍効果)を得ることである。例外としては、再生不良性貧血における造血幹細胞移植はドナーの造血細胞による造血能回復を狙うという観点から固形臓器移植に近い。もう一つの違いとしては、固形臓器移植では患者の免疫が維持されるのに対して、造血幹細胞移植では免疫系もドナー細胞に置換される。合併症も固形臓器移植なら拒絶反応となるが造血幹細胞移植ではGVHDとなる。造血幹細胞では免疫寛容がおこり、長期的には免疫抑制剤の投与を減量していく。免疫抑制剤の投与の目的は固形臓器移植では拒絶反応の防止、造血幹細胞移植では急性GVHDの予防となるが、慢性GVHDの発症に対しては効果が証明されていない。
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