造血幹細胞移植、骨髄移植によるGVHD対策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 10:14 UTC 版)
「免疫抑制剤」の記事における「造血幹細胞移植、骨髄移植によるGVHD対策」の解説
移植片対宿主病(GVHD)とはドナー由来の免疫細胞が宿主を異物とみなす病態である。平たく言えば、造血幹細胞における拒絶反応である。一般的な移植後の拒絶とは宿主の免疫細胞が移植片を異物とみなすという点で異なる。具体的な症状、マネジメントも下記に示すように異なる。 急性GVHD 移植後100日以内に発症するGVHDである。骨髄破壊的な移植を行った場合は移植後2~3週間後に好発し、60日以内の発症の場合が多いが、骨髄非破壊的なミニ移植の場合は60日以降の発症も珍しくない。皮膚症状が初発となることが多いが、おもな障害臓器は皮膚、消化管、肝臓である。重症度は皮疹の広がり、下痢の量、ビリルビン値の上昇により、重症度は決定される。少なくとも一つの臓器障害が48時間以上持続し、他の原因疾患が否定されたとき急性GVHDと診断をすることができる。重要な鑑別として血栓性微小血管症(TMA)があげられる。予防のため、免疫抑制剤の投与を通常は受けているが、それでも一定の確率で発症する。通常、骨髄移植ではHLAのマッチングが行われているため、マイナーなHLA不適合によっておこると考えられている。治療はステロイドの投与である。 慢性GVHD 移植後100日以降に発症したGVHDを慢性GVHDという。発症時期によって区別されているが、急性GVHDとは異なる病態が考えられている。急性GVHDと比較してより多くの臓器を障害を受けること、しばしば自己免疫疾患に類似した病態となるのが特徴である。急性GVHDは移植片中の成熟T細胞が関与するのに対して、慢性GVHDは移植された造血幹細胞から分化、成熟したT細胞が関与すると考えられている。限局した軽い症状のみの慢性GVHDはステロイド外用などの局所療法で対応可能であるが、多くの臓器に障害が生じている場合や単一臓器でも重篤な障害を有する場合は全身的免疫抑制療法の適応となる。
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