近世弓術の特徴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 02:10 UTC 版)
江戸時代、太平の世にあって弓矢が武器としての役割が消える中で、武射系統も礼法を摂取することにより文武の側面は融合し、弓術は武芸としての一面が目立つようになっていった。この時代の弓術の概観を示す物として、江戸時代初期の大和流流祖・森川香山のよる五射六科がある。五射は代表的な射法を、六科は弓術家として身につけるべき事項を挙げたものである。 内容五射巻藁前(まきわらまえ) 巻藁の射法。基礎に則って射ることから、格式の高いものとされる。 的前(まとまえ) 現在の近的での射法。 遠矢前(とおやまえ) 遠距離に射る射法。繰矢・尋矢(くりや)ともいう。 差矢前(さしやまえ) 矢継ぎ早に射る射法。指矢・数矢ともいう。 要前(ようまえ) 戦場での射法。敵前ともいう。 六科弓理 射術理論。巻藁前・的前・遠矢前・差矢前・要前。 弓礼 礼法、作法。 弓法 弓、矢、ゆがけなど弓具の取り扱い方。 弓器 弓、矢、ゆがけなど弓具(の種類)に関する知識。 弓工 弓、矢、ゆがけなど弓具の制作方法。 丹心 錬心とも。心の鍛錬。 射に「真行草」あり、として各種の射が分類されることもあった。 『真』…「的前」(近的)の普通射形 『行』…繰矢(くりや)・矢文の法 『草』…指矢・堂射 また、定められた作法に則り、礼法に従って射を披露することを射礼や体配などという(「体配」とは日置流系の用語)。今日では全日本弓道連盟により「一手射礼」「巻藁射礼」などいくつかの射礼が定められており、現存の各流派もそれぞれ独自の射礼(体配)を伝えている。 ただし江戸時代には「礼は小笠原、射は日置」といわれ、礼法については小笠原流が、射法については日置流が専門であると認識されていた。
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