赤とんぼじっとしたまま明日どうする
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評 言 |
作者を知らずこの句に接した時、「山頭火」か「放哉」の作品ではないかと感じた。作者は本名「田所 康雄」。映画「寅さん」で親しまれたあの「渥美清」である。彼が世を去って既に十八年の歳月が流れた。 没後2年の2009年、渥美清句集『赤とんぼ』は、森英介編、本阿弥秀雄氏によって発行され、彼が俳人であったことが知らされた。掲句はありのままの人柄が「つぶやき」のように伝わってくる。 「明日どうする」と、とんぼに問いかけ、小さないのちとの交感に切なさを覚える。それは静かなドラマの一風景のようだ。 俳句の師を持たず、結社にも属さず、俳人である姿はごく身近な人も知らなかったという。「田所康雄」という「素」に戻って俳句に向き合っていたのであろう。 「チョウチョか トンボのように好きなところへ出掛けて生涯を終われるなら、末は野たれ死んでもいいんじゃないんですかね」 彼が残した言葉である。(NHK2007年放送、アーカイブスから) 役者として「山頭火」や「放哉」を演じてみたいという願いを持っていたという。山田洋次映画監督は句集の序文の中で「渥美さんは、時として哲学者のように思索的であり、ある時は詩人のように美しい言葉を語る人である」と語っている。 蓋あけたような天で九月かな 風天 「九月だな オイ さくら!蓋あけたような空だぞ」 あの 声が聞こえてくる。あっぱれな 明るさだ。 冬めいてションベンの湯気ほっかりと げじげじにもあるうぬぼれ生きること コスモスひょろりふたおやもういない |
評 者 |
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備 考 |
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