訳語における問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/13 08:26 UTC 版)
爵位としてのフュルストは、「侯(爵)」とも「公(爵)」とも訳されるが、それぞれ一長一短がある。 「侯(爵)」という訳語は、その原義が「諸侯」にあることと整合的であり、公(爵)/伯(爵)の訳が定着しているヘルツォーク/グラーフの間に位置する序列とされていることとも整合する。しかしながら、ドイツ語圏以外の英仏などの国々においてフュルストに相当する地位ないし爵位(英仏のprinceなど。これも原義は「諸侯・君侯」である。)は「公(爵)」や「大公」と訳されることや、これらの国々でドイツ語圏の辺境伯(Markgraf)に相当する爵位(英仏のmarquisなど)が「侯(爵)」と訳されることとも整合しない。とはいえ、ドイツ語圏だけを見れば一貫していることもあり、ドイツ史の記述では採用されることが多い。 「公(爵)」という訳語は、ドイツ語圏以外の英仏などの国々においてフュルストに相当する地位ないし爵位(英仏のprinceなど)を「公(爵)」と訳す場合にはこれと整合するし、marquisとの混乱も招かない。しかしながら、公(爵)との訳語が定着しているHerzogと訳語において区別できないという問題がある(これはドイツ語圏以外の英米などの国々においてフュルストに相当する地位ないし爵位(英仏のprinceなど)を「公(爵)」と訳す場合にも共通する問題である。)。この訳語が用いられるケースとしては、例えば日本政府は、Fürstentum Liechtenstein (英Principality of Liechtenstein)を「リヒテンシュタイン公国」と呼び、その君主を「リヒテンシュタイン公」や「公爵」と呼んでいる。 なお、例えば英仏においてはprinceという称号は、爵位以外の役割を果たすことがある。例えばイギリスにおいては、princeという称号は国王の親族男子の称号として、フランスにおいては国王の遠縁の親族男子の呼称(prince du sang)や公爵の長男の称号として用いられる(日本の皇室における親王や王に近い。)。このような称号としては、ドイツ語圏においては Prinz(プリンツ)が用いられており、フュルストは用いられない。これらの称号は、その地位に応じて、親王、王子、公子、侯子などの訳語が与えられる。
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