解析的延長の原理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 06:37 UTC 版)
詳細は「一致の定理」および「解析接続」を参照 以下、U は ℂ の領域(連結開集合)とし、f1, f2 は U 上で定義された正則函数とする。 定理 (一致の定理) 等化集合 {z ∈ U |f1(z) = f2(z)} が少なくと一つの集積点(非孤立点)を持つならば。U 上恒等的に f1 = f2 が成り立つ。 定理 (一致の定理) 点 a ∈ U および a と異なる点からなる U 内の点列 (zn) で a に収束するものが存在して、任意の n に対して f1(zn) = f2(zn) が成り立つならば、U 上恒等的に f1 = f2 が成り立つ。 例えば、U を ℂ 内の連結開集合で、実数直線 ℝ 内の少なくとも二点を含む区間 I(ゆえに I の各点は孤立しない)を含むものとすると、 定理 U 上で定義された正則函数 f1, f2 が I 上で一致するならば、U の全域で一致する。 このことは、ℂ 内の区間 I 上で定義された函数を、I を含む ℂ 内の連結開集合 U 上で定義された解析函数に延長する方法は高々一つしか許されないことを意味している。 つまり例えば、複素指数函数は、実変数の指数函数の ℂ への唯一の解析的延長である。 函数関係不変の法則: 例えば実数の対 x, y に対して等式 exp(x + y) = exp(x)exp(y) の成立はよく知られているが、解析接続により、x, y は任意の複素数としてこの等式は成り立つ。実際、y を実数として、ℂ(これも連結開集合)上で定義される二つの正則函数 f1, f2 を f1(z) = exp(z + y) および f2(z) = exp(z)exp(y) と置けば、これら二つは ℝ 上で一致するから、一致の定理により、ℂ 上で一致する。つまり、z を複素数として、任意の実数 y に対し exp(z + y) = exp(z)exp(y) が成り立つ。 z を複素数として、ℂ 上定義される二つの正則函数 f3, f4 を f3(u) = exp(z + u) および f4(u) = exp(z)exp(u) と置けば、(一つ前で見たとおり)これら二つは ℝ 上一致するから、(一致の定理により)ℂ 上で一致する。すなわち、任意の複素数 u および z に対して exp(z + u) = exp(z)exp(u) は成り立つ。
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