解剖の書
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「アブー・アル=カースィム・アッ=ザフラウィー」の記事における「解剖の書」の解説
アブー・アル=カースィムの30巻の医学書『解剖の書』は1000年に完成したものである。医学を広範囲にカバーした内容で、歯学から分娩まで扱っており、約50年間外科医として鍛錬し教えてきた経験の蓄積によるデータが詰め込まれている。その中で彼は医師と患者が良好な関係を築くことの重要性を説き、教え子たちを "my children" と愛情をこめて書いている。また、患者の社会的地位に関係なく治療することの重要性を強調している。正確な診断と最適な治療方法を選択するため、個々の症例の綿密な観察を推奨している。 『解剖の書』は後にクレモナのジェラルドが12世紀にラテン語訳し、イラストをつけた。中世ヨーロッパでは5世紀もの間、医学知識の源泉とされ、医師や外科医が参照した。 万人が認めているわけではないが、『解剖の書』には後に「コッヘル法」と呼ばれるようになった肩関節の脱臼の治療法や、産科学の "Walcher position"(仰臥位)が記されている。また、アンブロワーズ・パレの600年ほど前に血管の縛り方を記していた。また、歯科用器具を記した最古の書籍であり、血友病が血縁者に受け継がれることも記している。 また、普通分娩で鉗子を使う技法も解説している。また、200種類以上の自身の外科用器具コレクションを紹介している。そのほとんどはかつて使われたことがないもので、Hamidan Zohir(1993年)はアブルカシスの発明した器具として26種の外科用器具を挙げている。 体内の縫合に腸線を使うという彼の技法は現代の手術でも実際に行われている。腸線は最終的に溶ける唯一の自然な素材で、体内に使っても問題を起こさない。『解剖の書』には母親の胎内で死んだ胎児を鉗子で取り出す技法も書かれており。これもアブー・アル=カースィムの発明である。 『解剖の書』には、動脈の血流制御に焼灼の代わりに結紮するという技法も書かれている。手術用の針も『解剖の書』に記されており、アブー・アル=カースィムの発明とされている。 アブー・アル=カースィムは、メス、掻爬器、開創器、膣鏡など200ほどの新たな外科用器具を考案した。
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