複数のメトリック情報
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/03/28 07:41 UTC 版)
EIGRPでは、各経路ごとに異なる5種類のメトリック情報を持っている。 遅延合計(Total Delay、10μ秒単位) 最小帯域幅(Minimum Bandwidth、kbit/s単位) 信頼性(Reliability、1から255の数値で、255が最も信頼できる) 負荷(Load、1から255の値で、255が最も負荷が高い) 最小MTU(実際には計算で使っていない) デフォルトでは遅延合計と最小帯域幅だけが使われるが、管理者がそれぞれのメトリック情報の収集を必要に応じて設定できる。 経路を比較するとき、以下のような式にこれらメトリック情報を入れて計算し、複合メトリック値を求める。 [ ( K 1 ⋅ Bandwidth + K 2 ⋅ Bandwidth 256 − Load + K 3 ⋅ Delay ) ⋅ K 5 K 4 + Reliability ] ⋅ 256 {\displaystyle {\bigg [}{\bigg (}K_{1}\cdot {\text{Bandwidth}}+{\frac {K_{2}\cdot {\text{Bandwidth}}}{256-{\text{Load}}}}+K_{3}\cdot {\text{Delay}}{\bigg )}\cdot {\frac {K_{5}}{K_{4}+{\text{Reliability}}}}{\bigg ]}\cdot 256} 式に出現する定数( K 1 {\displaystyle K_{1}} から K 5 {\displaystyle K_{5}} )はユーザー設定可能で、これによって動作が変化する。なお、 K 5 {\displaystyle K_{5}} が0の場合(デフォルト設定)には K 5 K 4 + Reliability {\displaystyle {\tfrac {K_{5}}{K_{4}+{\text{Reliability}}}}} という項を1とみなして計算上考慮しないことになっている。 K 1 {\displaystyle K_{1}} と K 3 {\displaystyle K_{3}} はデフォルトでは1で、他の定数はデフォルトで0である。したがってデフォルト設定では上記の式が (Bandwidth + Delay) * 256 となっている。 EIGRPによるルーティングを行うネットワークでは、明らかに全てのルーターでこれらの定数を同じ設定にする必要がある。さもないと恒久的なルーティングループが生じる可能性が出てくる。シスコのEIGRPルーターは、これらの定数値が一致しない場合はエラーを報告し、他のルーターと隣接関係を形成しない。 EIGRPは帯域幅と遅延のメトリック情報を以下の計算でスケーリングする。 EIGRPの帯域幅 = 107 / インタフェースの帯域幅 EIGRPの遅延 = インタフェースの遅延 / 10 シスコのルーターでは、インタフェースの帯域幅は設定可能な静的パラメータであり、kbit/s単位である。107 kbit/s(つまり10Gbit/s)という値をインタフェースの帯域幅で割った値を上述の複合メトリック値の計算式で使用する。同様にインタフェースの遅延も設定可能な静的パラメータであり、μ秒単位である。これを10で割った値は10μ秒単位の値となり、それを上述の計算式で使用する。 IGRPでも基本的に同じ計算式で複合メトリック値を計算するが、IGRPの計算式では256という係数が使われていない。この係数はEIGRPとIGRPの後方互換性を保つ目的で導入された。複合メトリック値はIGRPでは24ビットの値だが、EIGRPでは32ビットの値になっている。したがって、24ビットの値を256倍することで8ビット左へシフトしたのと同じことになり、値が32ビットに拡張される。このため、EIGRPとIGRPの間で情報を交換する際には自動的に256倍したり256で割って変換している。 EIGRPはそれぞれの経路のホップ数も保持しているが、メトリック計算にはホップ数は使われない。ホップ数は事前設定された最大値(デフォルトでは100で、1から255の範囲で設定可能)と比較する用途でのみ使用する。ホップ数が最大値を超えている経路はルーターによって到達不能と判断される。
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