遠近道印(おちこちどういん 藤井半知 1628-?)
遠近道印は、江戸のガイドブック「江戸雀」と東海道の旅案地図「東海道分間絵図」の作者である。
絵図師遠近道印の素性については不明であったが、富山藩お抱えの藩医で、江戸のガイドブック「江戸雀」を執筆し、有名な蹴鞠師でもあった、藤井半知(1628-?)が実名ではないかといわれている。
彼は、明暦3年(1657)の大火後の北条氏長が指揮した地図作成事業に参加した。この明暦の測量図から作成した初めての正確な江戸図「江戸分間図」や、菱川師宣(吉兵衛)が道中風俗画を書き加えたことで、いながらにして旅が楽しめる道中絵巻物風になった「東海道分間絵図」を作成した(1690年 元禄3年)。
遠近道印作成の同絵図の名称にある「分間」とは、実測という意味である。じっさい、同絵図は磁針などによる道線法や交会法という測量に基づいて作成された縮尺1万2千分1の道中図である。しかし、利用者の便宜を考慮して、街道をどこまでも直線状に連ねた折本形式にすると、図形の変形は避けられないから、それを補うように随所に方位を付記する工夫をしている。
江戸から京までの東海道の旅人や沿道の風景が描かれた折本5帖からなるそれは、実用的であり人気を博したのだろう、版を重ねたという。
彼を、忠敬以前のもっとも優れた地図作成者として名を上げるものもいる。

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