自己抗体の産生機構
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/29 03:10 UTC 版)
大阪大学微生物病研究所/免疫学フロンティア研究センターらの研究グループは2015年、全身性エリテマトーデスや多発性硬化症といった自己免疫疾患との関わりが知られている、9割以上の人間が感染しているヘルペスウイルスの一種、エプスタイン・バール・ウイルス(EBウイルス)による自己免疫疾患発症のメカニズムを分子生物学的に示した。 通常、胚中心B細胞(成熟段階にあるB細胞)の表面に、排除する抗原に合わないB細胞受容体や、自分の抗原に反応するB細胞受容体があれば、そのB細胞はアポトーシスにより排除される。しかし、その胚中心B細胞がEBウイルスに感染すると、EBウイルスの潜伏感染Ⅲ型遺伝子のLMP2AがB細胞受容体シグナルを模倣し、さらに形質細胞(抗体産生細胞)への分化を促進する因子 (Zbtb20) が出現して、本来はアポトーシスにより排除されるべき自己反応性B細胞が生き残り(B細胞選択異常)、自己反応性受容体などの抗体を出し続ける形質細胞になる結果、自己免疫疾患が発症するということである。 また同様に、鳥取大学医学部医学科分子病理学分野の研究グループは2017年、EBウイルスに感染したB細胞からバセドウ病の自己抗体である抗TSHレセプター抗体 (TRAb) が産生されることを分子生物学的に示した。 EBウイルスに感染したB細胞は自己反応性か否かによらず、EBウイルスの潜伏感染Ⅲ型遺伝子のLMP1によるT細胞非依存性のCD40共刺激シグナルの模倣によるNF-κBの活性化で、活性化誘導シチジンデアミナーゼ{AID}の発現が促進されT細胞非依存性のクラススイッチが可能となり、多クローン性にあらゆるアイソタイプの抗体の産生をし得る。EBウイルスに感染したB細胞が自己反応性の抗体の可変部を持っていた時、自己抗体を産生し得るということである。
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