自己像幻視
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/11 23:49 UTC 版)
医学においては、自分の姿を見る現象(症状)は「autoscopy」、日本語で「自己像幻視」と呼ばれる。自己像幻視は純粋に視覚のみに現れる現象であり、たいていは短時間で消える。現れる自己像は自分の姿勢や動きを真似する鏡像であり、独自のアイデンティティや意図は持たない。しかし、まれな例としてホートスコピー(heautoscopy)と呼ばれる自身を真似ない自己像が見えたり、アイデンティティをもった自己像と相互交流する症例も報告されている。ホートスコピーとの交流は友好的なものより敵対的なことのほうが多い。 例えばスイス・チューリッヒ大学のピーター・ブルッガー博士などの研究によると、脳の側頭葉と頭頂葉の境界領域(側頭頭頂接合部)に脳腫瘍ができた患者が自己像幻視を見るケースが多いという。この脳の領域は、ボディーイメージを司ると考えられており、機能が損なわれると、自己の肉体の認識上の感覚を失い、あたかも肉体とは別の「もう一人の自分」が存在するかのように錯覚することがあると言われている。また、自己像幻視の症例のうちのかなりの数が統合失調症と関係している可能性があり、患者は暗示に反応して自己像幻視を経験することがある。 しかし、上述の仮説や解釈で説明のつくものとつかないものがある。「第三者によって目撃されるドッペルゲンガー」(たとえば数十名によって繰り返し目撃されたエミリー・サジェなどの事例)は、上述の脳の機能障害では説明できないケースである。
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