背景‐営業特金
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 03:39 UTC 版)
1980年代の株価の長期に渡る上昇傾向の下で、企業は証券市場で大量の資金調達を行い、調達した資金を再度市場で運用して収益を上げていた(財テク)。その運用方法として、営業特金と呼ばれる特定金銭信託(特金)が行われた。 営業特金とは、証券会社に運用を一任した特定金銭信託をいう(取引一任勘定取引)。通常の特定金銭信託は、委託者が受託者である信託銀行に対して注文内容などを全て指図し、それに従って信託銀行が証券会社に注文を出す仕組みであるが、営業特金においては、例えば指図書を白紙のままで証券会社へ渡し、証券会社が後から書き込んで、あたかも委託者の指図通りに発注したかのような形式を作り出すのである(特金の指図書の偽造は違法である)。特定金銭信託の仕組み上は、顧客と証券会社の間に直接の契約関係は存在しないはずであるが(両者間に信託銀行が介在する)、営業特金においては両者の間に実質的に売買の一任契約が存在した。顧客が自ら売買をせずに特定金銭信託を利用するのは、簿価分離により税法上メリットがあるからである。つまり、特定金銭信託はそこでの損益を企業本体の株式と合算せずに計上できるため、過去に買い入れた株式の含み益を実現させずに株式売買を行えるのである。このような営業特金は、1980年代の余剰資金の増加、それによる金融・証券の自由化を原因とした、銀行と証券会社の顧客獲得競争の中で活発となったと考えられる。
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