糖鎖の合成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/06/09 14:08 UTC 版)
遺伝子工学の進展によりタンパク質の合成が簡単にできるようになったのに対し、糖鎖の合成は純粋な化学合成に頼らざるを得ず、これが糖鎖の機能解明を阻む大きな要因となっている。化学合成による手段も、前述したように糖鎖の構造は複雑であるため十分発展しているとは言い難い。 まず糖の特定のヒドロキシ基だけを反応させるために、他のヒドロキシ基との反応性の差を利用して保護基をかける必要がある。様々な条件で脱保護できる保護基が開発されており、グルコースなど一般的な糖には選択的な保護を行うための手段が確立されている。ただしこの保護だけでも多段階を要し、高い技術が必要となる。 グリコシル化反応も臭化糖、フッ化糖、アセトイミデート、チオグリコシドなど様々な誘導体を用い、立体を制御しながら糖同士を結合させる反応が数多く開発されている。ただしこれらによってもまだ収率・選択性など十分とは言い難く、自由に必要な糖鎖を作り出せる段階にはまだ遠いのが現状である。固相合成によって効率よく合成を行う手段も検討されつつある。 また、近年糖転移酵素を用いた酵素合成も盛んに行なわれて来ている。シアル酸転移酵素、ガラクトース転移酵素、フコース転移酵素などの一部は糖核酸を供与体として、適切な基質を選択する事で、高収率、高選択的に目的の糖を導入する事ができる。 化学合成と酵素合成を併用した、chemo-enzymatic な方法は、生理活性糖鎖を合成する有力な方法の一つになっている。
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