アベルメクチンの生合成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/15 00:04 UTC 版)
「アベルメクチン」の記事における「アベルメクチンの生合成」の解説
アベルメクチンを合成する酵素の遺伝子群がStreptomyces avermitilis で解析された。アベルメクチン合成酵素群は次の4段階の反応を進める。1)ポリケチド合成酵素(PKS)によるアグリコン部の合成、2)アグリコンの修飾、3)糖側鎖の合成と修飾、4)アグリコンの糖化 である。この遺伝子群で構造が微妙に異なる8つのアベルメクチン全てを合成する。 アベルメクチンアグリコンは、4種のポリケチド合成酵素(AVES 1、AVES 2、AVES 3、AVES 4)で合成される。この酵素複合体はI型ポリケチド合成酵素と同じ活性を持つ。2-メチルブチリルCoAあるいはイソブチリルCoAが出発原料となり、7つのアセテート単位および5つのプロピオネート単位を縮合して、アベルメクチン“a”系列あるいは“b”系列が合成される。伸長が終了した初期アグリコンはAVES 4のチオエステル結合を分子内ラクトン化反応で置き換えられて切り離される。 アベルメクチンの初期アグリコンは他のアベルメクチン生合成酵素群でさらに修飾される。AveEはシトクロムP450のモノオキシゲナーゼ活性を有し、C6とC8の間でフラン環を形成する。AveFはNAD(P)H依存性ケトレダクターゼ活性を有し、C5のケト基をヒドロキシル基に還元する。AveCはモジュール2がデヒドラターゼ活性を持ちC22とC23の結合に影響するが、機序は確定していない。AveDはSAM依存性C5-0-メチル転移酵素活性を持つ。AveCならびにAveDが作用するか否かでアベルメクチンが“A”または“B”系列になるか、あるいは1または2系列になるかが決定する。 糖鎖の合成および糖化については、AveA4の下流に位置する9つの部位(orf1とaveBI〜BVIII)が関与している。AveBII〜BVIIIはdTDP-L-オレアンドロースを合成し、AveBIはアグリコンをdTDP-糖で糖化している。遺伝子orf1から生成される酵素はレダクターゼ活性を持つと思われるが、合成のどの過程に関与しているかは定かではない。
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