筆太郎のプライオリティは尊重されなかった
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 02:27 UTC 版)
「鈴木筆太郎」の記事における「筆太郎のプライオリティは尊重されなかった」の解説
鈴木筆太郎の教具が紹介される以前は、ドイツなどで使われていた、数を「円」で表す「数図」が用いられていて、数を「正方形」で表したものはなかった。しかし、筆太郎の教具が発表されて以降は「5個1列」の数図や、筆太郎考案の「黒い背景」を取り入れた数図が現れた。しかし、これらの「数図」を用いた著書には典拠文献が一切書かれていなかった。また成城小学校の佐藤武(1864?-1961)は1919年に「鈴木氏の説のごときはなんら認識論的な立脚点を有していない」と批判したが、佐藤は欧米の数図に加えて、「筆太郎の別子教数器にの上に「円」を書いただけの教具」を紹介し、欧米の数図より優れていると書いた。それらの模倣教具には筆太郎の「十個一括」を直感できるものは一つもなかった。 その結果筆太郎が期待したほどには「筆太郎の研究成果を積極的に評価、模倣して広める人」はいなかった。筆太郎の研究成果は、プライオリティを尊重しない教育研究者たちによって正しく継承されることなく忘れられていった。 筆太郎は1927年の著書でこれらの模倣について、特に円をならべた図に対しては「基数概念の形成というだけの事ならどちらでもよろしいが、加減の定理を知らせるという点にいたっては、かなり著しい優劣を生じ、さらに進んで十個一括という十進法の論理を如実に示すためには、ぜひとも5個1列の10個一団の形式であるべく、またそれが方形であることを必要とする」と批判している。1958年の水道方式のタイル提唱のときに遠山啓も「タイルが便利な点は切ったりつないだりが自由にできる点である。これが円で表すとだめなのです。円で表すとつなげることがどうしてもできません。タイルはつないだり切ったりが容易であるために、ばらばらに離れたものだけでなく、つながった量、つまり連続量を容易に表すことができます」と正方形タイルの有効性を述べている。
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