筆法・評価
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/07 17:44 UTC 版)
「後醍醐天皇宸翰天長印信(ろう牋)」の記事における「筆法・評価」の解説
書は、かなり濃く磨られた墨によって揮毫されている。書体は行書的な要素も部分的にはあるものの、全体的に謹直な筆の運びとなっており、どちらかといえば楷書的傾向が強い。 崩御二ヶ月前の作であるにも関わらず、書道史研究者の丸山猶計によれば、その筆勢に気力の衰えは感じられないという。美術史・古文書研究者の羽田聡も、崩御直前にも関わらず「これだけ力強く荘厳な筆跡は、強靭な精神の表れである」と評し、加えて、空海に対する強い追慕の念を指摘する。古文書研究者の湯山賢一も同様に、崩御直前の最晩年に至っても意気の衰えのない「雄渾な筆遣いを伝えて著名」としている。 また、空海を淵源とする書風である大師流からの影響も指摘されている。例えば、戦前の文部省編纂『日本国宝全集』第43巻(1930年)では、一般に後醍醐天皇の書はきわめて雄渾な筆致のものが多いが、それらと比べれば本作品はやや枯淡であると評されており、原本の伝・空海の筆致に寄せたものではないかという。羽田も、しっかりと一つ一つの字を揮毫した楷書的な点画からは、父帝の後宇多の『後宇多天皇宸翰施入状』(国宝、神護寺蔵)と同様に、大師流からの影響が見られると評している。
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