第一部・S・カルマ氏の犯罪
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/10 21:01 UTC 版)
「壁 (小説)」の記事における「第一部・S・カルマ氏の犯罪」の解説
安部は、この作品について、一般的にはカフカの影響があると見られがちだが、ルイス・キャロルの影響の方が強いと語っている。また、主人公「S・カルマ氏」については、以下のように説明している。 このナイーブで平凡な、わが主人公は、私の考えでは一種の実存主義者らしい。私は彼をなるべく行動にそって具体的に描きながら、同時に彼が理念を行動化する道すじを表わすようにつとめた。一般的な喜劇的表現である客観化の方法によってでなく、むしろ主観をそのまま表現することで喜劇化することを考えたのだ。一人称形式は必然的にとられた形である。彼は自己に対して真面目であり、誠実であることによって、その無意味さをバクロする。私がバクロするのではなく、彼自身が、哲学的な表情で自分の首をしめてみせてくれるという仕組なのである。 — 安部公房「S・カルマ氏の素性」 なお、安部はこの作品を「小説に対する僕の姿勢を大きく変えてくれた作品」だと27年後に振り返り、「構想が熟したと思ったとたん、とつぜん自由になった感じがした。ペンが躍り出し、四十時間ほど一睡もせずに一気に書上げることができた。その後の僕の仕事の方向を決定づけることにもなった」と語っている。
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