硬さ変化機構
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/24 14:38 UTC 版)
キャッチ結合組織の研究の多くはナマコの皮(真皮)を材料として行われて来ており、硬さ変化機構の解明が進んでいるのはナマコ真皮のみである。真皮層は,コラーゲン繊維がフェルト状の網目になったものが、プロテオグリカンのゲル中に埋まったものでできており、ゲル中には細胞がまばらに存在しているのみ。ゲルは大量の水を含んでおり、ヒドロゲルと見なせるものである。 ナマコ真皮の詳細な力学試験によると,真皮には軟状態,標準状態(刺激を受けていない時の状態)、硬状態の3つの力学的状態が区別される。 硬さの異なる3状態で、形態的にも違いが観察されている。真皮のコラーゲン繊維はコラーゲン原繊維が集まって形成されており,コラーゲン原繊維間には架橋が観察される。架橋の数は「軟<標準<硬」である。架橋の数のみならず、原繊維そのものの形態にも3状態で違いが見られる。軟状態では、コラーゲン原繊維の直径が硬状態と比べて減少しており、これは軟状態になる際、亜繊維の凝集力が減少し、原繊維がさらに細い亜原繊維の束に分かれたためと解釈できる。 硬さは神経の支配を受けている。「硬化神経の支配下にある神経分泌細胞から硬化タンパク質が分泌され,また,軟化神経の支配下にある神経分泌細胞から軟化タンパク質が分泌され,それらのタンパクがコラーゲンやプロテオグリカン分子間の相互作用に何らかの変化を与えて硬さ変化が起きる」との作業仮説の下に研究が進められ、硬化神経や軟化神経から出される神経伝達物質(神経ペプチド)と、神経分泌細胞から分泌されるタンパク質が複数単離されてきた。亜原繊維同士の凝集に関わるタンパクがテンシリンであり、その働きに拮抗するタンパクがソフニンである。「標準→硬」の変化を起こすタンパク質はnew stiffening factor (NSF)である。
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