甘すぎた予測と膨らんだ費用と危険性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/03 02:40 UTC 版)
「スペースシャトル」の記事における「甘すぎた予測と膨らんだ費用と危険性」の解説
スペースシャトル計画の始まりの段階で、NASAの関係者には「一回の飛行あたり1200万ドルほどのコストで飛ばすことができる」などと主張する者もいて、そうした甘い見込みのもとに計画は進んでしまった。 シャトルを繰り返し安全に飛ばすため、再使用する機体の部品は飛行のたびに徹底的な検査が行われたが、シャトルを構成する膨大な数の部品の検査にかかる費用は巨額のものとなった。 エンデバーの製作にかかった費用は約17-18億ドルで、シャトルの一回の飛行にかかる費用は2002年の時点では約4億5,000万ドルだった。だが、コロンビアの事故以降は安全対策のコストが上昇し、2007年には1回の飛行につき約10億ドルを要するようになった。 スペースシャトルには技術的な困難だけでなく、官僚主義に侵されたNASAという巨大組織の抱える問題も影響した。チャレンジャー号の事故は予測・回避できた可能性が高かったにもかかわらず、NASAの幹部は「事故は起きないだろう」と充分な対策を行わず、米国が行った宇宙飛行中の事故では初の死者を出している。コロンビア号の事故においても、発射時の映像を確認した職員によって上昇中に剥離した断熱材がオービタに衝突した可能性が指摘されたものの、NASA幹部は提供された情報を軽視したという経緯がある。 政治学者のロジャー・A・ピールケ・Jr. (Roger A. Pielke, Jr.) は、2008年度初頭までにシャトル計画にかかった費用は総額で1,700億ドル(2008年度換算)ほどと算定した。これによれば打ち上げ一回あたりのコストは15億ドルということになる。 最終的には、スペースシャトルの計135回の打ち上げで2090億ドルもの費用がかかっていた。
※この「甘すぎた予測と膨らんだ費用と危険性」の解説は、「スペースシャトル」の解説の一部です。
「甘すぎた予測と膨らんだ費用と危険性」を含む「スペースシャトル」の記事については、「スペースシャトル」の概要を参照ください。
- 甘すぎた予測と膨らんだ費用と危険性のページへのリンク