現象および機構
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/05 21:16 UTC 版)
物体はその機械的強度;引張強度(UTS,降伏応力)より小さい力学的応力を一時的に受けても破壊されることはなく、弾性範囲内であれば応力を取り除くことにより元の状態に復元する。しかしながら、巨視的には弾性範囲内の小さい応力であっても、原子論レベルの微視的状態においては、ごく一部の原子がもとあった場所に戻らない非弾性的振る舞いを起こし(転位現象)、それが蓄積されることによって強度が劣化する。繰り返し応力を受ける場合、破壊された断面を観察すると縞状の模様が観察されることが面心立方金属(Al、Cu、オーステナイト鋼)に多く見られ、その襞の1つが一振幅の負荷に相当しストライエーション(Striation)や固執すべり帯(Persistent slip bands;PSBs)と呼ばれる。 疲労による機械的強度の低下は多くの場合、始めに物体に微小な割れ目(クラック)が発生し、繰り返し応力を受けることによって割れ目が次第に大きくなる機構による。物体に応力が加えられると弾性範囲内であっても拡散現象などによってわずかな物質の移動が発生して応力を緩和しようとする。物質の移動によって微小な割れ目が発生すると、その割れ目の先端において応力が大きくなり、割れ目が進行するようになる。物体を構成する物質の一部が、応力を受けて弾性率や強度の小さい別の物質に変化する場合にも同様の現象が起こる。 疲労破壊は温度、表面処理、金属的微細組織、酸化・不活性気体、残留応力、物体間の接触(フレッティング)など様々な環境要因に影響される。
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