玉鋼と日本刀
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 09:54 UTC 版)
たたら製鉄で作られた鉄は元来は様々な用途に使われてきたが、靖国および日刀保たたら以降はほぼ日本刀製作専用の鋼材となった。 玉鋼が日本刀の製作に不可欠であるという主張の根拠として、第一に鍛接が容易であることが挙げられる。玉鋼は現代鋼と比較して有害不純物、特にリンと硫黄の含有量が非常に少ないため割れにくく、作刀の際の激しい折返し鍛錬にも耐えられる高い鍛接性をもつ。また、それによって炭素量の調整と均一化、介在物の小型化と分散化を実現でき、優れた地鉄を持つ日本刀の製作が可能だとされている。一般的に、鉄は熱して赤めると急速に酸化が進むため、表面に形成された酸化膜によって鍛接ができない状態となる。それを除くのに通常はフラックスが用いられるが、玉鋼の場合、鍛錬する際に搾り出される鉄滓が鍛接面を洗い流す作用をもつため、酸化膜が鍛打によって簡単に剥がれ落ちる利点もある。 一方で玉鋼を使用しない刀工も存在し、小規模たたらによる自家製鋼を行う例や、古鉄を利用する例などがある。前者の例としては国の重要無形文化財の保持者(いわゆる人間国宝)であった天田昭次を始め、真鍋純平、上田祐定などが挙げられる。天田は玉鋼を「刀の地鉄が明るく冴え、刃の切れ味にも優れる」と評価しつつも、「地鉄に古刀のような変化が乏しく、深みに欠ける」として自家製鋼の可能性を模索した。また、真鍋は「鎌倉期の相州伝のような変化のある地鉄を再現したいと追求した末、自家製鋼にたどり着いた」と語っている。
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