独酌へくる初電話声千両
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出 典 | 声千両 |
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評 言 | 作者嶋野國夫は大正11年生れ。昭和18年「かびれ」に入会、「麦明」を経て、昭和56年「玄火」を創刊(主宰)した。居住地の千葉県を中心に千葉県俳句作家協会副会長や顧問として活躍した。 句集『声千両』は、没後すぐ遺句集として伊達甲女等によって編纂された。 掲句は、晩年独り暮らしだった新年の句。こよなく酒を愛した氏の新年の心境を遺憾なく詠んでいる。その「…初電話声千両」に独酌に名を借りた寂しさを吹き飛ばす素直な心境が映し出されている。 氏の句に共通している真実の中の虚構、または虚構の中の真実の組み立ては極めて隙のない句を作り上げている。 地下からの木魚の音や蟻地獄 鈍行のまだ停まりたいさくらどき 金柑のたましひ一つ呑みこむか 中には独特のエロスさえ感じさせる句もある。 仙人を落したをんなところてん 筆者も晩年の氏に孫弟子としてご指導いただいた。いつも真剣に俳句と向き合う真摯な姿は、教師として過ごされた現役時代のよき先生をそのまま引き継いでいた。併せて、自己を強調しない人懐っこい酒豪の人間性もみせた。 連れのない炎天棒切れを拾ふ 残る虫昼の途方もない余白 |
評 者 | |
備 考 |
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