特有の加工欠陥
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/13 06:06 UTC 版)
「フェライト系ステンレス鋼」の記事における「特有の加工欠陥」の解説
フェライト系ステンレス鋼に絞り加工を行うと、「リジング (ridging)」や「ローピング (roping)」と呼ばれる圧延方向に平行に走るしわ(凹凸)が発生することがある。リジングはフェライト系ステンレス鋼における代表的な加工欠陥の1つである。リジングによるしわは表面にも裏面にもでき、表で凹となる箇所は裏で凸となっており、板厚を貫通して起きている現象である。鋳造組織や熱延板組織に由来する変形挙動の異なる単位領域がフェライト系の組織中に存在することが、リジングの主原因と考えられている。フェライト系でリジングが特に起きやすいのは、フェライト系の場合はオーステナイト単相からフェライト単相への完全変態がないため問題となる単位領域が残りやすいためだと考えられている。リジングによるしわは成形品の美観を損ねるため研磨による削除を行う必要があり、製造上の大きな手間となる。さらに大きなリジングは割れの原因となることもある。チタンの添加がリジングの低減に有効な場合もあるが、主原因がステンレス鋼の製造工程と密接に関連していることもあり、根本的な撲滅は難しい面もある。 同じくフェライト系をプレス成形する際に起こうる欠陥として、「縦割れ」と呼ばれる脆性割れがある。これは普通鋼でも起きる欠陥で、縮みフランジ変形のひずみを原因とし、円筒絞り品の胴部分や角筒絞り品のコーナー部分など縮み変形が大きい箇所で起きる例が知られている。「二次加工脆化割れ」とも呼ばれ、絞りを行ったあとの二次加工時に起きることも多い。温度依存性があり、気温が低下する冬に起きやすい。加工上の対策としては、中間焼なまし実施、しわ押さえ圧上昇、加工速度低下などが行われる。材料上の対策としては、r 値向上、微量のホウ素添加などがある。
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