熱水によって生成されたヒスイ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/10 01:58 UTC 版)
「糸魚川のヒスイ」の記事における「熱水によって生成されたヒスイ」の解説
ヒスイはもともと、高温高圧下の変成作用の結果、曹長石がヒスイ輝石と石英に変成して生成されると考えられていた。この従来のヒスイ生成説ではヒスイと同時に必ず石英が生成される。しかし糸魚川のヒスイのみならず、日本国内、そして世界的にみてもヒスイと石英が同時に確認できる例に乏しく、従来の生成説は実際のヒスイの産状から見て大きな矛盾があった。結局、ヒスイは曹長石から生成されたのではなく、別の原因で形作られていったものと考えられるようになった。 ヒスイの原石を丹念に調べていくうちに、自形結晶と呼ばれる形の整った結晶が確認された。自形結晶は液相、ないし気相の中で結晶が成長していくプロセスを経て形成されていく。つまりヒスイは液体ないし気体の中で成長していく過程を経て生成されたことが想定される。またヒスイの自形結晶のそばにはソーダ沸石が確認された。沸石は熱水から生成される代表的な鉱物であり、このことからヒスイは熱水から生成されたのではないかとの説が唱えられるようになった。 その他、ヒスイの中に熱水が割れ目に入りこんで結晶したものと判断される脈状の構造が確認されており、これらの証拠から低温高圧の環境下で、ヒスイは熱水から析出されることによって生成されたと考えられるようになった。具体的には海洋プレートが沈み込んでいく沈み込み帯でヒスイは生成されると考えられている。沈み込んでいく海洋プレートは温度が比較的低く、その上、沈み込んでいく過程で脱水されていくため、大量の熱水が生み出される。ヒスイは沈み込んでいく海洋プレートの直上という、比較的低温かつ高圧、そして豊富に熱水が供給される、マントルのカンラン岩が熱水によって蛇紋岩化されるような場所で生成される。 しかし熱水によってヒスイが生成されたとの説にも難点がある。それは糸魚川のヒスイの中にも見られる、大きさが数メートル、重量にして100トンを超える巨大なヒスイがある点である。熱水からヒスイが析出されるとして、果たしてそのような巨大なヒスイが析出され得るのかが疑問視されている。この点については熱水による変成作用で他の岩石がヒスイに変化したのではとの説が唱えられている。
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