深層水の形成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/28 10:17 UTC 版)
海底に沈みこむ密度の高い水塊は、北大西洋と南極海という限られた海域で形成される。この海域で海水は風により冷却され、また海氷形成時に氷から排出される塩分で塩分濃度を増加させる。塩分の増加が海水の凍結温度を下げ、蜂の巣状の海氷の中でさらに冷却された塩水(ブライン)が形成されることで非常に重くなり、氷からゆっくり零れ落ちて海底に沈みこむ。これらの深層水塊は重いので、より軽い海水を押しのけて下るように沈み込んで極域の海盆を満たす。ちょうど陸上の渓谷や河川のように、低層水塊は海底の地形に沿って移動する。 ノルウェー海では風による冷却が主な原因で沈み込んだ水塊北大西洋深層水(NADW)が海盆に広がり、グリーンランドやアイスランドやイギリス沖を繋げる深海のシル(海盆を分断する相対的に浅い海嶺)の裂け目を移動しながら、非常にゆっくりと大西洋の深海平原を南に向って流れている。北部大西洋でこのように沈み込んだ水塊は、ベーリング海峡が非常に浅く狭いため、太平洋に流れ出すことはない。 一方南極海の北部、ウェッデル海の海氷の縁部では、風による冷却に加えブラインの排出が活発である。これにより形成された南極底層水(AABW)が沈み込み大西洋海盆に向かって北方へ流れ出すが、非常に重いので北大西洋深層水の下部に潜り込んでいる。この水塊は南極半島と南アメリカの最南端の間のドレーク海峡によって阻まれ、北大西洋深層水同様に太平洋へ流入することはない。
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