活動性結核の化学療法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/08 19:05 UTC 版)
活動性結核治療の原則は、治療開始時は感受性薬剤を3剤以上併用する。治療中は患者が確実に薬剤を服用することを確認する、副作用を早期に発見し適切な治療を行うということに尽きる。薬剤感受性が確認できていない初期の治療はイソニアジト(イスコチン)とリファンピシン(リファジン)にエタンブトール(エブトール)またはストレプトマイシンを加えた3剤以上の併用が必要である。ピラジナミド(ピラマイド)を加える事で薬剤耐性の危険性がさらに低下するとともに治療期間を最短に抑えることができる。これらの3剤または4剤の治療が標準療法となる。標準療法の最大の障害は薬剤による副作用である。標準治療を行った4人に1人は何らかの薬剤変更が必要であったという報告もある。標準療法が行えないと副作用が多く、抗菌力も劣る二次抗結核薬を長期使用することになる。イソニアジトとリファンピシンの発熱や発疹の副作用で使用できない時は減感作療法も検討され、ガイドラインも示されている。 標準治療はピラジナミドの有無によって2つある。標準治療法Aは初期2ヶ月間はイソニアジト、リファンピシン、ピラジナミドにエタンブトールかストレプトマイシンを加えた4剤、以後4ヶ月はリファンピシンとイソニアジドの2剤で治療する。標準治療法Bは初期2ヶ月間はイソニアジト、リファンピシンにエタンブトールかストレプトマイシンを加えた3剤、以後7ヶ月はイソニアジドとリファンピシンの2剤で治療する。結核が重症の場合、2ヶ月を超えても菌陽性が続く場合、糖尿病、塵肺など免疫低下来す疾患を合併している場合、結核の再発では維持期治療を3ヶ月延長する。エタンブトールまたはストレプトマイシンはイソニアジド、リファンピシンのいずれかに薬物耐性であった場合に両剤耐性となることを防ぐために投与する。2ヶ月以上投与した後イソニアジドとリファンピシン両方に感受性と判明した時点で中止するが、感受性結果判明までは副作用などで投与困難とならない限り継続する。ピラジナミドは原則2ヶ月までの投与とする。ピラジナミドを使用しないと必要な治療期間が6ヶ月から9ヶ月と1.5倍になること、薬剤耐性菌であった場合、4剤使用の方が新たな耐性防止のためには安全であること、薬剤性肝障害の出現頻度がピラジナミドの有無によって大差ないことからできるだけピラジナミドは使用することが望ましい。 治療開始時の菌陽性であった場合、菌検査の結果が最も重要な治療効果の判断基準である。標準治療を行った場合、治療開始後2ヶ月後には80〜90%程度が陰性化する。
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