機能的形態素
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 02:48 UTC 版)
「やま」のように、単独で語として(日本語文法では、文節として)現れるものと、「お金」の「お-」のように、単独では用いられず必ず他の形態素とともに現れるものがある。前者の「やま」のような形態素を自由形態素 (英: free morpheme)または内容形態素という。また、後者の「お金」の「お-」のような形態素を拘束形態素または束縛形態素 (英: bound morpheme) という。例えば、英語の{boy}、{fly}などの形態素は実質な意味を持ち、単独で用いられるから、前者の自由形態素である。 また、語彙的な意味を持つものとそうでないものに分けることができる。語彙的な意味を持つ形態素を語根 (英: root/英: radical) という。例えば、「たか-さ」「たか-い」に共通して現れる「たか-」は語根であり、「空間的な位置が上方にあって下との距離が大きい」という語彙的な意味を持つ。これに対して、「-さ」や「-い」に語彙的な意味を認めるのは難しく、むしろ、「-さ」は「たか-」を名詞として機能させる形態素であり、「-い」は「たか-」を形容詞として機能させる形態素であると考えられる。この「-さ」や「-い」のように、機能的あるいは文法的な意味は持つが語彙的な意味は持たないと考えられる形態素を機能的形態素 (英: functional morpheme) または文法的形態素 (英: grammatical morpheme) という。 語根は、自由形態素であることもあれば、拘束形態素であることもある。「たか-さ」「たか-い」の「たか-」は単独で語として現れることが無いので拘束形態素であり、一方「やま」「あお」のような語根は単独で語となる自由形態素である。 構造上、語として振舞う拘束形態素を接語と呼び、それ以外の拘束形態素を接辞と呼ぶ。 一つの形態素が互いに微妙に異なる複数の現れ方をすることがある。例えば「あめふり」、「あまやどり」、「きりさめ」に含まれる「あめ」、「あま」、「さめ」は同じ「雨」という意味を持つ形態素に属していると考えられる。このとき、「あめ」「あま」「さめ」という三つの形態 (英: morph) は、同一の形態素に属し、互いに異形態であるという。一つの形態素に属する複数の形態についても、「あめ」のように単独で語として現れ得る自由形態 (英: free morph) と、「あま-」「-さめ」のように必ず他の形態素にくっついて現れる拘束形態 (英: bound morph) とを区別することができる。
※この「機能的形態素」の解説は、「形態素」の解説の一部です。
「機能的形態素」を含む「形態素」の記事については、「形態素」の概要を参照ください。
- 機能的形態素のページへのリンク