構造と物理化学的特性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/12 22:03 UTC 版)
「ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド」の記事における「構造と物理化学的特性」の解説
NAD+はニコチンアミドモノヌクレオチドおよびアデノシンからなる物質であり、ヌクレオチドの5'がそれぞれリン酸結合によって結合している構造を取る。アデノシンの2'には-OH基が付属しており、これがリン酸基に置換されると、NADP+となる。 酸化還元反応に関与しているのは、ニコチンアミドであり、酸化型および還元型の構造は図の通りである。(還元型は4位の炭素に立体特異性がみられる。) 上図では、水素原子が1つだけ付加されたように見えるが、ニコチンアミドのN+が電子によって還元されるために、結果として2つの水素原子を運搬しているのと同じ状態となる。すなわち、全体としての二電子酸化還元反応は以下の通りである。 NAD + + {\displaystyle {\ce {NAD^+ +}}} 還元物質 ( 2 e − + 2 H + ) ⟷ NADH + H + + {\displaystyle {\ce {(2{\it {e^{-}}}{+}2H^{+})<->{NADH}+{H^{+}}+}}} 酸化物質 酸化還元電位 (Eo') は-0.32Vである。 アデニン塩基を含むことから、NAD+とNADHはともに強いUV吸収を示す。NAD+の吸収ピークは259 nmで、モル吸光係数は16,900 M−1cm−1である。一方、還元型のNADHのみ、339 nmに第2の吸収ピークを持ち、そのモル吸光係数は6,220 M−1cm−1である。この第2のピークは酸化型のNAD+には存在しないため、分光光度計を用い波長340nmあるいは339nmの吸光度を測定することでNAD+とNADHの間の酸化還元反応を簡単に測定することができる。脱水素酵素活性測定にはこの方法が良く用いられている。 NAD+とNADHは蛍光にも差が存在している。水溶液中のNADHは460 nmをピークとする寿命0.4 nsの蛍光を発するが、NAD+は蛍光を発しない。NADHの蛍光特性はタンパク質に結合すると変化するため、これを用いて解離定数を測定することができる。また蛍光顕微鏡を使って生細胞の酸化還元状態を測定することも可能である。
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