核内互変異性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/21 18:51 UTC 版)
核内互変異性はプロトン互変異性の一種であり、X,Yが芳香環に組み込まれているものを指す。 代表的な核内互変異性はケト-エノール互変異性でもある2,4-シクロヘキサジエノン(ケト型)とフェノール(エノール型)の互変異性である。芳香族化による安定性からエノール型であるフェノールのみが確認できる。同様にシクロヘキサ-2,4-ジエン-1-イミン(イミン型)とアニリン(エナミン型)では芳香族であるアニリンのみが確認できる。 しかしヘテロ芳香族化合物では必ずしも芳香族化した互変異性体が安定とは限らない。2-ピリドン(ラクタム型)と2-ヒドロキシピリジン(ラクチム型)のラクタム-ラクチム互変異性では、前者が極性溶媒中と固相中で優位、後者が非極性溶媒中と気相において優位であることが、紫外吸収スペクトルなどから知られている。一方2(1H)-ピリジンイミンと2-アミノピリジンでは芳香族化した2-アミノピリジンだけが観測される。 DNA や RNA が持つ核酸塩基も核内互変異性を示す。通常それぞれの塩基は安定なケト型やアミノ型をとっているが、それらが不安定なエノール型やイミノ型へと互変異性化することで、本来ミスマッチで好まれないはずの塩基対 (A:C, G:T) を作ってしまう。このことは、一万から百万塩基の中で一塩基程度の割合で起こるとされるDNAポリメラーゼ上の偶発的突然変異の原因のひとつと考えられており、構造化学や分光学、計算化学による検討が行われているトピックである。
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