最密充填系における負の熱膨張
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/29 00:26 UTC 版)
「負の熱膨張」の記事における「最密充填系における負の熱膨張」の解説
負の熱膨張は通常、指向性の相互作用をもつ非最密充填系(氷、グラフェンなど)や複雑な化合物(Cu2O, ZrW2O8、β-石英、ゼオライトの一種など)において観察される。しかし、ある論文では、二体中心力相互作用のみを持つ単一成分最密充填格子においても負の熱膨張が生じることが示されている。ポテンシャルが次のような十分条件を見たせば負の熱膨張が生じることが示唆されている。 Π ‴ ( a ) > 0 {\displaystyle \Pi '''(a)>0} ここで、 Π {\displaystyle \Pi } は二体原子間ポテンシャル、 a {\displaystyle a} は平衡距離である。この条件は一次元では必要十分条件であるが、二次元および三次元では十分条件ではあるが必要条件ではない。ある論文では「近似的」必要十分条件を以下のように導出している。 Π ‴ ( a ) a > − ( d − 1 ) Π ″ ( a ) {\displaystyle \Pi '''(a)a>-(d-1)\Pi ''(a)} ここで d {\displaystyle d} は空間次元を表す。上式より、二次元および三次元では二体相互作用をもつ最密充填系における負の熱膨張はポテンシャルの三階微分がゼロもしくは負でも実現しうる。ここで、一次元と多次元は定性的に異ることに注意が必要である。一次元では熱膨張は原子間ポテンシャルの非調和性によってのみ引き起こされる。したがって、熱膨張率の符号はポテンシャルの三階微分の符号のみによって決定される。多次元の場合、幾何学的な非線形性も存在し、例えば原子間ポテンシャルが調和ポテンシャルである場合にも格子振動は非線形である。この非線形性が熱膨張に寄与する。したがって、多次元の場合には条件内に Π ″ {\displaystyle \Pi ''} および Π ‴ {\displaystyle \Pi '''} が含まれる。
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