曲線の形状と疲労限度の存在
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/04/26 02:16 UTC 版)
「S-N曲線」の記事における「曲線の形状と疲労限度の存在」の解説
破断繰り返し数が疲労破壊としては比較的少ない回数の 105 回程度以下のときは、そのような疲労を低サイクル疲労と呼ぶ。それに対して、破断繰り返し数 105 回程度以上の疲労破壊は高サイクル疲労と呼ばれる。一般には S-N 曲線は、負荷応力が下がると破断繰り返し数が伸びていく右下がりの曲線となる。しかし、材料が低炭素鋼のような一部の材料では、およそ 106 回辺りで S-N 曲線が水平となる。すなわち、これ以下の応力では何回負荷を繰り返しても破断しないという下限が存在する。この下限の応力は疲労限度と呼ばれる。 一方、非鉄金属材料の多くでは疲労限度を示さずに、S-N 曲線は水平にならずに下がり続ける。プラスチック材料の多くも、繰り返し数 107 回でも水平にならない。疲労限度を示す鋼材料も、腐食環境下では疲労限度が消失して S-N 曲線は水平にならずに下がり続ける。 高繰り返し数領域で曲線が水平になる疲労限度を持つような材料でも、さらに 108 回や 109 回といった領域まで負荷を繰り返すと疲労破壊に至る場合がある。このような繰り返し数領域での疲労破壊は超高サイクル疲労やギガサイクル疲労と呼ばれる。超高サイクル疲労が起こる材料のS-N曲線は、水平になった後に再び右下がりの曲線となることがある。このような S-N 曲線のことを2重 S-N 曲線と呼ぶ。超高サイクル疲労のメカニズムはまだ十分に明らかにされていないが、通常の疲労破壊が材料表面に発生するき裂が進展して起こるのに対して、超高サイクル疲労は材料内部からき裂が発生・進展して破断に至るのが特徴である。そのため、破壊メカニズムの異なる2種類の S-N 曲線が同居することで2重 S-N 曲線となる考えられている。
※この「曲線の形状と疲労限度の存在」の解説は、「S-N曲線」の解説の一部です。
「曲線の形状と疲労限度の存在」を含む「S-N曲線」の記事については、「S-N曲線」の概要を参照ください。
- 曲線の形状と疲労限度の存在のページへのリンク