政府系ファンド
米国のサブプライムローン(信用度の低い個人向け住宅融資)問題に端を発した金融市場の混乱により、昨年来、欧米の金融機関の中には業績が悪化し、資本不足に陥るところが出てきました。そうした金融危機に際して、政府系ファンド(Sovereign Wealth Fund)が出資に乗り出しました。アラブ首長国連邦のアブダビ投資庁が米国の大手銀行シティ・グループに75億ドル(約8000億円)を出資したのを手始めに、中国、シンガポール、中東などの政府系ファンドが金融機関に巨額の出資をして、一躍、注目される存在になりました。
政府系ファンドは米国への製品輸出や原油の輸出などで積み上がった外貨準備を原資として運用するもので、別名「国富ファンド」とも呼ばれます。国家が運営にかかわる投資で、規模が大きいだけに、市場原理に反して運用されるようなことがあると、一国の株式市場にとどまらず、国際金融市場の波乱要素になる可能性があるため、その動向には十分な注意が必要とされます。
中にはノルウェーの政府年金基金のように、投資方針が毎年、議会で審議され、高水準の情報開示が行われているファンドもありますが、一般的には運営に関する透明性が低く、運用方針や資産規模が明らかでないファンドが多くなっています。かつて中東系のファンドが米国の港湾業務を請け負う英国企業を買収した時は、米国議会が安全保障上の理由で大反対し、買収を断念させたこともあります。このため、米国は政府系ファンドに何らかの規制を設けるべきだと主張してきました。
しかし、昨年来、政府系ファンドが米国の大手金融機関の「救世主」となっているため、米国政府も政府系ファンドに対する見方を変えざるを得ず、規制を求める声は急速に減退しているのが実情です。日本企業に対する政府系ファンドの投資も今に始まったことではありません。中東諸国は以前から日本株を大量に保有しているほか、ノルウェーの基金の投資先日本企業は600社を超えるといわれています。これだけ金融がグローバル化している現在、投資に対する規制には無理があるでしょう。
むしろ「海外からの投資を積極的に取り込んで、日本経済の活性化につなげることを考えるべきだ」という意見が多くなっています。そのためには政府系ファンドに対して投資戦略の開示を求め、透明性を高くすることが重要です。主要国蔵相・中央銀行総裁会議(G7)でもそうした方向性を確認しています。
(掲載日:2008/04/15)
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