放射化学的手法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/15 09:04 UTC 版)
「ニュートリノ検出器」の記事における「放射化学的手法」の解説
ブルーノ・ポンテコルボが提案した手法に基づく塩素検出器は、テトラクロロエチレンのような塩素含有流体で満たされたタンクからなる。ニュートリノは荷電カレント相互作用により塩素-37原子をアルゴン-37に転換する。この反応のニュートリノエネルギーしきい値は0.814MeVである。この流体は、定期的にヘリウムガスでパージされ、アルゴンが除去される。その後ヘリウムを冷却してアルゴンを分離、アルゴン原子数は電子捕獲放射性崩壊に基づき数えられる。リード (サウスダコタ州)近くの旧Homestake鉱山に位置する470トンの流体を保持する塩素検出器は、太陽ニュートリノをはじめて測定し、太陽からくる電子ニュートリノが不足していることを初めて観測した(太陽ニュートリノ問題を参照)。 同様の検出器設計で、より一層低い0.233MeVのしきい値を持つガリウム → ゲルマニウム転換を用いたものは、低エネルギーニュートリノに対する感度が高い。ニュートリノはガリウム-71の原子と反応し、不安定同位体ゲルマニウム-71の原子に転換することができる。ゲルマニウムは化学的に抽出、濃縮される。ニュートリノはゲルマニウムの放射性崩壊を測定することによって検出される。この後者の方法は、反応順序(ガリウム-ゲルマニウム-ガリウム)にちなみ、通称「アルザス-ロレーヌ」法と呼ばれる。ガリウムとゲルマニウムは、それぞれフランスとドイツにちなんで名付けられており、アルザス-ロレーヌ地方の領有権は歴史的にフランスとドイツの間で争点となっていたため、この技法の通称となった。これらの放射化学的検出法はニュートリノをカウントすることに対してのみ有用で、ニュートリノの方向やエネルギーの情報は得られない。ロシアのSAGE実験では約50トン、イタリアのGALLEX/GNO実験では約30トンのガリウムを反応物として用いた。この実験はガリウムが高価であるため、スケールアップすることが難しい。より大きな実験ではそれゆえ、より安価な反応物へと移行していった。
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