批判・影響・貢献
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/06 02:08 UTC 版)
ヘッケルの反復説は、数々の点で批判の対象となってきた仮説でもある。まずヘッケルは、反復が動物発生にみられるのは「系統発生が個体発生の直接原因であるため」としていたが、これに対する批判があった。現在の生物学では至近要因と究極要因という因果関係の概念的区別がなされているが、当時はこういった考え方は一般的ではなく、むしろ反復説に対する批判を通してこういった概念の区別がなされるようになったとされる。 また、ヘッケルは自身の反復説の法則性を重要視するあまり、自説にあわない観察事例をすべて例外と位置づけて軽視したことも、当時の研究者の批判を浴びることにつながった。他にも、彼は自己の考えを強調するために図を歪曲したり、彼が進化の中間型として発表した微生物が偽物だったりと捏造があったことが指摘されており、彼の科学データの信用性を損なうこととなってしまった。 近年[いつ?]でも「個体発生は系統発生の反復はしないが、発生の初期ほど進化的により古い形質が現れる傾向にある」といった考えは根強く、フォン=ベーアやヘッケルと似た発想を支持する研究報告は少なくない。一方で、(発生砂時計モデル)という新しい仮説も出されているが、研究者間で共通見解に到達していないのも事実であり、ヘッケル以来大きな進展のない分野でもある。 ヘッケルの反復説の社会的影響は、ダーウィニズムと同様、曲解に近い形で社会的広がりを見せた。たとえば子供は大人にくらべて進化的に前の段階であるとか、いわゆる原始的種族は、進化の段階が低い状態にあるといった拡張がおこなわれ、ナチス・ドイツを始めとするレイシズムに利用されることもあった。
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