打ち消しの表現
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/20 20:13 UTC 版)
現在形(…ない) 上伊那は東日本方言の「…ナイ(ネー)」と西日本方言の「…ン」の雑居地であり、広い地域で併用されているが、南部では「…ン」を、北部では「…ナイ(ネー)」を多用する傾向がある(分布の詳細は『東西方言の語法上の対立と上伊那方言』を参照)。 また、太田切川以南、すなわち駒ヶ根市赤穂以南の地域には、婉曲的な打消表現として「…セン」(例.買やーせん)という表現がある。これは、近畿方言の「…ヘン」と同類のものである(近畿方言の「…ヘン」は「…セン」の変化したものであり、上伊那方言の方がより原形に近い)。 伊那市富県や箕輪町福与では丁寧形「…ます」の否定形は「…マセン」ではまく「…マシネー」となる。これは中信方言の特徴であるが、上伊那での詳細な分布は不明である。中川村片桐では「…マセン」。 過去形(…なかった) 過去否定には伝統的には「…ナンダ」を用いる。県別感覚表現辞典によると、南信方言域の中若年層では「…ンカッタ」を中心に用いるという。中信方言域での使用については言及されていないが、長野県史方言編の言語地図では、高年層で「…ナンダ」と「…ンカッタ」が併用されている地点がある。 順接条件(…なければ) 順接条件には「…ネバ」の変形「…ニャー」が広く用いられるが、「…ずは」ないし「…ずば」に由来するとされる「…ジャー」も用いられる。中・北部では「…ナケリャ」、「…ナキャ」などのナケレバ系や、打ち消し「ない」に直接「ければ」が下接した「…ナイケレバ」「…ネーケリャー」も用いる。また「…ンケリャー」が中・北部などで用いられるが、馬瀬良雄は打ち消しに「ない」と「ん」を併用する地域に分布すると推定している。南部では共通語の「…なければならない」には「…ンナラン」も用いる。 逆接条件(…なくても) 逆接条件には「…ナンデモ」「…ンデモ」「…デモ」「…ドモ」などを用いる。 中止形(…ずに) 中止形には「…ズニ」「…ッコ」が用いられる。駒ヶ根市赤穂以南の地域では、「…ナシ二」という表現も用いる。例.ガッコーエモ イカナシニ アスンデバッカ オルンダニ(学校へも行かずに遊んでばかりいるんですよ) 反語(決して…ない) 「…ズカ」「…ズケ」が用いられている。例.ソンナ コトカ° アラズケ(そんなことがあろうか、いやあるはずがない)
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