強盗と殺害
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/28 05:33 UTC 版)
居候をしなくなったものでは、さらに物騒な習性のものがある。ヤリグモは、古くから強盗系の生活をすることが知られていた。このクモは、腹部が後ろにとがって伸びている。低木の葉陰や、岩の陰などにぶら下がっているのがよく見られるが、クサグモやヒメグモ類の網に入り込んでいるのも観察され、様々なクモの網を渡り歩き、かかった餌を奪い、場合によっては網の主のクモも攻撃するという。 同じく近縁のオナガグモというクモは、腹部の後端が非常に長く伸び、足をそろえて伸ばすと、マツの葉がぶら下がっているようにしか見えない。森林の低木の枝先などに糸を引いてぶら下がっているのがよく見られる。このクモは、長らく数本の糸を引いただけの網で、糸の粘性が強いので昆虫を捕獲できると言われていた。しかし、これは同様に棒状の体をもつマネキグモでの観察と混同されたようである。実際には、このクモは、クモを専門に狩ることが分かった。糸をたどってやってくるクモに粘液糸をかけて捕らえるという。 このように、イソウロウグモの近縁のものに、クモ食いの習性が観察されることから、イソウロウグモの習性との関連が問題になる。クモを狙うクモは他にも知られており、日本ではセンショウグモ科のもの、コガネグモ科のヤマトカナエグモ、ハエトリグモ科のケアシハエトリなどがほぼ専門的にクモを狩ると言われる。つまり、クモ狙いで他のクモの網を訪れる習性そのものは特に例のないものではない。その意味で、ヤリグモのような生活もそれほど異常なものとは見なす必要はない。そして、ヤリグモの生活とイソウロウグモの生活とは紙一重である。ただし、居候から強盗へと進化したのか、強盗から居候が派生したのかについては定説がない。ただ、ヒメグモ科のクモの特徴として獲物を粘球のついた糸を投げかけるようにして捕らえるということがあり、これが獲物として蜘蛛を捕まえる上で有効であったのではないかとの説がある。 なお、多くのイソウロウグモ、ヤリグモ、オナガグモは、いずれもごく普通種である。これはこのような特殊に見える習性が十分な成功を挙げている証拠である。
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