建築比例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/25 03:23 UTC 版)
ギリシア建築の特徴の一つは、柱の直径、高さ、柱間、そして神殿の高さ、幅、長さの間に、秩序だった比例関係が用いられていることである。 厳格なモジュールの規定は、オリンピアのゼウス神殿から用いられるようになったようである。この神殿では柱間を1として、内陣は3:9、トライグリフとメトープの組み合わせが1/2、屋根瓦が1/8などのモジュールが規定されている。アテナイのパルテノン神殿では、されにモジュールと厳格な比例関係が決定されており、その比例関係は、(視覚的調整により中央部が微妙に膨らんではいるが)円柱の下部直径1.88mに対して標準的柱間4.25m、比率は4:9であり、基部スタイロベート の幅:長さ、内陣の幅:長さ、そして建物自体の幅:コーニスまでの高さも、全く同じ比率になっている。 このような比例関係はイオニア式オーダーについても全く同様に用いられたが、伝統的なドーリア式オーダーは、このモジュールと比例の関係に重大な問題が持ち上がった。それは、トライグリフをフリーズの端に配置し、トライグリフとメトープを等間隔に配置するため、これに対応して両端部の柱間を短縮するなどの調整が必要とされたことである。これに細部のモジュールの関係性を対応させなければならなかったので、その調整は綿密な計算を必要とした。 ヘレニズム期の建築は、各部の比例関係が重視されるようになったので、このような煩雑さによってドーリア式オーダーは敬遠され、例えば、マグネシアのアルテミス神殿を設計した建築家ヘルモゲネスは数学的比例に基づいた美を重視し、ドーリア式よりもイオニア式オーダーの方を好んだ。事実、ヘレニズム建築では、ドーリア式オーダーは美学的欠陥があるものとされ、殆ど用いられることがなくなったのである。
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