工業所有権と産業財産権
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/07 00:07 UTC 版)
「工業所有権」の記事における「工業所有権と産業財産権」の解説
日本語の「工業所有権」は、もともとはフランス語の"propriété industrielle"または英語の"industrial property"の訳語であり、工業所有権の保護に関するパリ条約において「工業所有権」の訳語が充てられたことなどから、一般に普及した。 パリ条約の日本語訳文において「工業」の語が用いられたのは、第1条(3)冒頭の「工業所有権」(propriété industrielle) の部分とその後の「工業及び商業」(à l’industrie et au commerce) の部分との訳語を整合させるためであったと言われる。しかし、この規定が、工業と並べて商業を工業所有権の対象とすることを規定し、さらに、農業等も含まれるとしていることからも明らかなとおり、工業所有権は工業分野における権利のみを指すものではないため、「工業」という訳は誤訳であるとの指摘がかなり早い時期からなされてきた。なお、一説では、パリ条約締結時の担当者が「産業」と訳し当時の司法省に承認を求めたところ、(翻訳の適否はともかく)「産業」では意味が広すぎるし、他の法律・条約での使用例も見当たらない、として採用されなかったようである。 「工業所有権」及び「知的所有権」という形で使われたきた「所有権」という訳語についても、「所有権」は一般に有体物について用いられることから、無体物を対象とする場合には、「財産権」という語がより適切であるとの指摘があった。また、「財産権」という語を採用すると、"industrial property right"と"industrial property"とにそれぞれ「産業財産権」と「産業財産」という一貫した訳語を充てることができるの対して、"industrial property right"を「工業所有権」と訳した場合には、"industrial property"を「工業所有権」または「工業財産」等と訳さざるを得ないという問題もあった。 このため、2002年7月3日に策定された知的財産戦略大綱において、明治時代以来用いられてきた訳語「工業所有権」は「産業財産権」と改められ、工業所有権に関する法律の総称も、「工業所有権法」から「産業財産権法」と改めることとされた。また、同時に「知的所有権」も「知的財産権」に改められた。ただし、これらは法令や団体の固有名称等に対しては直ちには適用されておらず、現在でも、工業所有権という語が残った法律や団体が存在する。
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