対称作用素と自己共役作用素
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/05 14:35 UTC 版)
「非有界作用素」の記事における「対称作用素と自己共役作用素」の解説
稠密に定義された作用素 T が、 その定義域のすべての元 x と y に対して ⟨ T x ∣ y ⟩ = ⟨ x ∣ T y ⟩ {\displaystyle \langle Tx\mid y\rangle =\langle x\mid Ty\rangle } を満たすとき、T は対称であるという。つまり、稠密に定義された作用素で T∗ が T の拡張(次節を参照)になっているようなものが対称作用素である。ある作用素 T が対称であるための必要十分条件は、付随する二次形式が実であること、すなわち、数 ⟨ T x ∣ x ⟩ {\displaystyle \langle Tx\mid x\rangle } が、T の定義域内のすべての x に対して実となることである。 さらにT∗ = T が成り立つとき、作用素 T は自己共役であると言われる。共役作用素は必ず閉なので、自己共役な作用素は特に閉となる。稠密に定義された閉の対称作用素 T が自己共役であるための必要十分条件は、T∗ が対称になることである。対称作用素の中には自己共役でないものもある。 Jを上で用いた写像 x ⊕ y ↦ − y ⊕ x {\displaystyle x\oplus y\mapsto -y\oplus x} とする。稠密に定義された作用素 T に対して、そのグラフΓ(T) が J(Γ(T)) と直交するなら、T は対称作用素になる。さらに、 H ⊕ H {\displaystyle H\oplus H} が Γ(T) と J(Γ(T)) の内部直和になっているなら、T は自己共役である。 作用素 T が稠密に定義された閉対称作用素で、さらに T の定義域上で定義された作用素 T – i, および T + i が両方とも全空間 H への全射であれば、T は自己共役になる 。つまり、H 内のすべての x に対して、T の定義域に含まれるような y と z で T y – iy = x および Tz + iz = x. を満たすようなものが存在する、ということを意味する。 上記の方法は稠密に定義されていない閉作用素には適用できない。稠密に定義されていない作用素の対称性は、共役作用素ではなく直接あるいはグラフを通じて定義される。 対称作用素の研究はしばしばその有界変換であるケイリー変換(英語版)を通じて行われる。 稠密に定義された作用素 T は、もしその二次形式が非負であるなら、すなわち ⟨ T x ∣ x ⟩ ≥ 0 {\displaystyle \langle Tx\mid x\rangle \geq 0} が T の定義域内のすべての x に対して成立するなら、正あるいは非負と呼ばれる。そのような作用素は、必ず対称である。 稠密に定義されたすべての閉作用素 T に対して、作用素 T∗T は、自己共役かつ正である。 スペクトル定理は、自己共役作用素や正規作用素へと適用されるが、一般的に、稠密に定義された作用素や閉作用素へは適用されない。なぜならば、それらはスペクトルが空となる場合があるからである。 至る所で定義された対称作用素は閉で、したがって有界である。これはヘリンジャー-テープリッツの定理(英語版)として知られる。
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