対地攻撃を目的としたモニター艦
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/22 15:56 UTC 版)
「モニター艦」の記事における「対地攻撃を目的としたモニター艦」の解説
以上のような対艦戦闘用の系列とは別に、第一次世界大戦の頃に出現した対地攻撃用のモニター艦がある。これはイギリス海軍が、陸上部隊の火力支援任務のために、戦艦や装甲巡洋艦の砲塔を流用した一種の移動砲台である。沿岸用なので喫水が浅く比較的乾舷が低い点や、強力な主砲塔を持つ点で従来のモニター艦と類似する。そのため喫水の深い大型航洋艦(戦艦など)よりも海岸に迫って砲撃することができる。建造の背景には、地上砲撃という戦術上の必要性のほかに、旧式艦の余剰砲塔の有効活用という意図もあったと言われる。イギリス海軍では35隻が建造された。イタリア海軍でも建造中止となったフランチェスコ・カラッチョロ級戦艦の主砲を利用して数隻を建造している。 大口径の主砲は持つものの、通常の水上戦闘艦と交戦するのには適しない。なぜなら、水上戦闘用のモニター艦が廃れたように、速射砲ではない少数の砲では遠距離の高速移動目標への命中は期待しがたいうえ、速力も極めて低速なためである。第一次世界大戦においてイギリス海軍のモニター艦ラグランとM28は、オスマン帝国海軍の巡洋戦艦ヤウズ・スルタン・セリムおよび巡洋艦ミディッリと交戦したが、一方的に撃沈されている。 軍用機の急速な発達が進むと、モニター艦の防御力の弱さが目立つようになり、速力が遅いことによる運用難もあって次第に衰退した。第二次世界大戦でもイギリス海軍では少数のモニター艦が使用されたが、うち1隻のテラーはドイツ軍機の空襲で失われている。ただし、モニター艦が目的とした海上からの火力支援任務はむしろ重要性を増し、一般的な戦艦やロケット弾搭載舟艇がこれを引き継いでいる。なおイギリス海軍のモニター艦2隻は1950年代まで在籍していた。
※この「対地攻撃を目的としたモニター艦」の解説は、「モニター艦」の解説の一部です。
「対地攻撃を目的としたモニター艦」を含む「モニター艦」の記事については、「モニター艦」の概要を参照ください。
- 対地攻撃を目的としたモニター艦のページへのリンク