家の神々と個人の信仰
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/06 09:11 UTC 版)
「古代エジプトの宗教」の記事における「家の神々と個人の信仰」の解説
平民は、神殿における神々の役割について漠然とは知っていただろうが、大祭を楽しむ他には、彼らと神々との接触は最小限のものであった。むしろ彼らは、祈りや個人の願いごとを「家の神々」と呼ばれる身近な神々に捧げていた。神殿を持たず、各家庭にあった小さな祭壇に祭られていたこれらの神々は日常の出来事に関する願いごとや相談の対象であり、社会の全ての階層にわたって幅広く信仰されていた。 中でも、最も人気があったのはベスとダウレトであった。ベスは、醜い小人の姿をした、愛や結婚、踊り、そして喜びの神であった。またタウレトは、妊娠して腹の大きいカバの立ち姿をしており、多産と安産の女神として全ての階層の女性の出産を助ける役割をしていた。 テーベに近い職人の町であるデル・エル・メディーナ(ディール・アル・マディーナ)では、アメン・ラーは国家神としてではなく、貧しき者や困っている者たちを守る個人の神として崇拝されていた。ここの人神が身につけていたスカラベに刻された銘から、アメン・ラーが彼らの個人的な友であるとともに、生命と救いを与える守護神であり、また寂しき者を支える神でもあったことが判明している。 このようにアメン・ラーが、富裕な者ではなく貧しき者たちの守護神であり、圧政者から弱き者や恐れる者を救う神であったことが、祈りの言葉の中にも強調されている。また、珍しいことに、デル・エル・メディーナでは、王家の谷に最初の王墓を造営し、職人の町を築いたアメンホテプ1世が神格化され、崇拝された。 古代エジプトでは、王や個人が神格化され、個人的な信仰を受けることは極めて珍しい。
※この「家の神々と個人の信仰」の解説は、「古代エジプトの宗教」の解説の一部です。
「家の神々と個人の信仰」を含む「古代エジプトの宗教」の記事については、「古代エジプトの宗教」の概要を参照ください。
- 家の神々と個人の信仰のページへのリンク